好きな着物の柄に思いを馳せて…。

好きな着物の柄は?と聞かれたらみなさん何と答えますか。

梅・桜・椿などのお花柄、矢がすりや水玉、夏は縦縞に金魚とか…。

好きな着物の柄に…

季節それぞれ、シーンそれぞれに好きな柄があるかと思いますが、私がまず先に挙げるのは「柳」です。柳は花が咲かないし、頭が枝垂れているのであまり好まれない…とアドバイスされたこともありますが私は柳柄が大好きで沢山集めていました。

能装束のモチーフにもなっている灰地に柳と蹴鞠が刺繍されている名古屋帯、柳柄の綿絽の浴衣、太鼓橋にしだれ柳の長襦袢。「柳色」と言われる少しくすんだ薄黄緑色も大好きで、帯揚げや帯〆にもよく「これ柳色よ」と言って使っていました。

何故そこまで柳にこだわっていたかと言うと、その頃好きで憧れていた男性の苗字に「柳」という文字が入っていたからです。
着物に詳しい方だったので会う度に何かしら柳にまつわるものを身に纏っている随分年下の私にいつも苦笑していたことを懐かしく思います。

雪子さんという女性が雪の柄の着物を着たり、梅田さんが梅の刺繍の帯を締めているのを見ると苗字名前ともに何の柄の所以もない自分の名前が残念でなりません。
知人に「椿野」さんという女性がいますが、椿の柄も大好きな私としては非常に羨ましい悔しい。いつか娘が生まれたら必ず何か謂れのある名前をつけようと思うのです。

先代の海老蔵が一世風靡した頃、贔屓の芸者さんは長襦袢に海老を染めさせたとか。好きな柄を身に纏う、それも着物の柄で晴れの日に、というのは着物好きならぞくぞくするほど興奮する瞬間。

「柳」の男性と結ばれることはありませんでしたが、季節としては新年か3月頃。まだ河原の柳が芽吹く前、数珠つなぎのような枝が風に揺れているのを見て「そうだ柳の名古屋締めよう」と思う度、あの人は柳柄に気付いてくれるだろうかとどきどきする胸をぎゅっとその帯で締めた21歳の春を思い出します。好きな柄を身に纏う…。みなさんの好きな柄は何でしょうか?